【女子のお仕事インタビュー】書店開業


「やらないまま死ぬのが一番嫌。」本屋を開くという経験に投資した29歳

池谷久美さん(29歳)

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小田急線の豪徳寺駅から歩いてすぐのところに、可愛い本屋さんがありました。ガーリーな店内には優しい笑顔の女の子。この人店主なの?!とびっくりしたのが去年のことです。

ちょこんとした見た目とは裏腹に男前な決断力をお持ちの池谷さん。
経験に投資するという感覚、すごく納得しちゃいました!
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●フランスの本屋さんをイメージして。

高橋:今は何の仕事をしているの?

池谷:大型書店の書店員として、コミックを担当しています。
発注したり、店に出したり、フェアを考えたり。もう全部ですね。レジも入りますしお客様対応とかもします。

高橋:以前ヌイブックスさんという小さな本屋さんを開いていらして。私たちはSNSで知り合ったんですよね。

ガラス張りで素敵な店内が外から見えました。

池谷:ヌイブックスは一昨年の10月にオープンして、去年の5月までやっていました。豪徳寺で。

高橋:ヌイブックスさんの本屋さんとしての特徴は。

池谷:本を読まない人にも本を手に取るきっかけを作りたいなと思って、あんまり文章ががっつり重いものは置かず、詩集とか、写真集とか、イラストと文章とか軽めのもの中心にして置いてました。

高橋:一度だけ私も、閉店の直前に遊びに行ったことがあります。
豪徳寺の駅からは近いんだけど、割と閑静な場所にあって。でも道順はわかりやすくて、路面店なのですごく目立つ。

池谷さんはフランスが好きなんですよね?

池谷:そうですね。店舗のイメージとしてはフランスの本屋さんみたいなものを目指して。

高橋:ヌイブックスをやるきっかけは何だったんでしょうか。

池谷:前々から店舗を自分でやってみたい、お店を1回作ってみたいっていうのはあったんですね。

本屋で働いていると、本との向き合い方にちょっと不満が出てくる。ずっと大型書店でやれないことをやってみたいなと思ってて。ある時たまたま店舗をできる場所を見つけて、ここだ!と思って。ここでやんなかったら一生やんないんだろうなと思ったので、始めようと。

高橋:池谷さんは学校卒業してすぐ本屋さんのお仕事を始めたんですか?

池谷:私は高校出てからすぐです。

高橋:じゃあもう長いですね!

池谷:大学に行ってたんですけど、半年もしないうちに辞めて、その後アルバイトで本屋さんを始めて。そこからもうトータル10年ぐらいやっております。

●たまたま物件がみつかったんです。

高橋:本屋さんで働いてる間に、大型書店ではできない「これをやりたいな~」みたいなアイデアが浮かんできて、物件探したりしてたんですか?

女の子の夢と希望を詰め込んだような店内。

池谷:ヌイブックスの店舗を見つけたのは本当にたまたまで。すぐやろうという気はなかったんです。その頃【本屋を始めるには】みたいな情報が出回り始めていたので、ずっと情報収集はしていて。いつかやりたいと思ってたら、本当にたまたまみつかったんです。物件情報を自分でもなんで見てたのか分かんないんですけど(笑)。

高橋:まあ運命だね(笑)。私もたまたまTbooksの場所が見つかって始めたので。たまたま具合で言うとちょっと似てるかもしれない。

で、見つけてわりとすぐ決めちゃったんですか?

池谷:そうですね。お金も貯めていたし、なんとなくやり方も、本の仕入れ方とかですけど、そういうのも知ってて、やっちゃおうかなって。

高橋:やるって自分の中ですぐ決めたけど、周りの反応はどんな感じでしたか。

池谷:周りにもいろいろ相談して、親は「あんたは言い始めたら聞かない」っていう感じで(笑)。まあオッケーしてくれて。友達も前からやりたいって言ってたよね、やったらって言ってくれて。
働いている先の書店のお店の人たちもすごい歓迎してくれて、じゃあ頑張ってって。

高橋:割とトントン拍子と言う感じで。

池谷:そうですね。特に反対もなく。

高橋:思い立って物件見つけてから開店するまでどのぐらいの期間だったんですか?

池谷:物件見つけてたのが4月・5月あたりだったと思うんですよ、確か。5月・6月位に一回見に行って。そこから契約したのが7月末でした。8月・9月で本屋で仕事をしながら有給消化して、休みの日に準備して。

高橋:2ヶ月かけて開店準備して。なるほどー。

●やっぱ大変だなーって。

高橋:お店をやっている間、どんな感じでしたか?

池谷:やっぱ大変だなーってすごい思ったのが一番(笑)。

高橋:何が大変でしたか?

池谷:やっぱり集客が大変だなあっていう。自分は本棚を作ることが一番楽しいし、それをやってきた人間なので、集客ってなると・・・。今はTwitterとかSNSがいっぱいあるのでそういうのでどうにかこうにかやってはいましたけど、重い荷というか。難しい・・・。

高橋:ヌイブックスをやっている時は専念されてましたもんね。他の仕事はせずに。お休みは1日くらいでしたっけ?

池谷:そうですね、週に1回位。

高橋:池谷さんのおうちは横浜の方で。

池谷:片道1時間半かかる(笑)。

高橋:そっかー(笑)。
それは体力的にも大変だ。

池谷:自分しかいないっていうのもあって。
開店準備から全部自分でやんなきゃいけない、事務的なことも自分でやんなきゃいけない、っていう。苦手なことも全部やるっていうのがやっぱり大変だなあと思いつつ、でもやっぱりお客さんとコミュニケーションがとれるのは楽しくて。大きい書店でやってるとお勧めしたりとかできないので、その辺はやっぱりやってよかったなあと。

繰り返しですよね、辛いことと楽しいことと。

高橋:確かに。

小さな店内でも一人でやるって大変なんですよね。

池谷:最初は1人でお店にいること自体が不安だったり。奥に大家さんの家があるんですけど、変な人入ってこないかなと思ったりとか。

高橋:路面店で中が結構見えるお店だから、そうですよね。気軽に入って来られるから。

●閉めようと思ったのは、開店して3ヶ月目

高橋:閉めようって思ったのはいつ頃なんですか?

池谷:閉めようと思ったのは、もう年始ぐらいに。1月?

高橋:じゃあ開店して3ヶ月目くらいか。

池谷:そうですね。早かったですよね。

高橋:決断が早い!

池谷:決断が常に早いっていう(笑)。クリスマスはとにかく楽しくて、お客さんも結構いらして、プレゼントもたくさん選んでいただいて。
でもこれを続けていくのはまあ無理だろうと思っていて。

高橋:経営的な意味で?

池谷:経営的な意味と自分の体力的な部分で、通勤とかいろいろ考えてるとこれだけでやっていくのは無理だなと思って。

違うことで収入を得つつやるか、それかもう閉めようって思ったんです。割と最初からこれ1本でやるっていうのは無理だろうって思っていて。本屋だけでやれているところは少ないってもう知っていたので。

じゃあ何かやりつつやるか、これ1本でやれるだけやって閉めるか、で考えたんですけど、結局大手の書店に戻りたい気持ちやたくさんの本を扱いたいっていう気持ちも出てきたので、だったらここでやれるだけはやって、帰ろうって思いました。

高橋:1月のはじめの段階でそういうことを考え始めて。

池谷:3ヶ月ぐらいやってみて、方向は決めねばならぬと思っていたので。

始めはとりあえず1本でやってみて、3ヶ月くらいしてからこれからの方向を考える時に、戻るっていうことを決めて。

高橋:その時、もう閉店時期も決めたんですか?

池谷:閉店を考え始めた時期に、両親にフランス旅行に行くけど、一緒に行く?って聞かれたんですよ。行きたい!!と思って。4月の後半で旅行の日程は決まっていて。

高橋:じゃあそれも閉店時期を決めるきっかけになって・・・。

池谷:良いきっかけになって、5月末までに決めたんですよね。

高橋:やめることもそんなにすごく重い決断ではなかった?すぐ決めてそうですよね(笑)。

池谷:そうですね(笑)。すぐ決めました。

●自分への投資だと思えばいいや。

高橋:場所を借りてやるってなると、初期費用がかかるわけじゃないですか。いくら安く抑えようとしても。不動産でお金かかったりとか、在庫も持たなきゃなんないし、店内の什器もあるから、気持ち的にハードルがある。その辺はやってみてどうでしたか?

池谷:開店前は初期費用をとにかく安く抑えるっていうことを考えました。閉めるってなった時は、考えるのは「今あるものをいかに放出できるか」じゃないですか。その時、千葉のせんぱくBookbaseさんがオープン準備している時だったので、レジや在庫も一部買い取って下さって、タイミング的にすごく上手く事が運び。

Twitterなんかでも、他の本屋さんとのつながりもあったので、本棚とか欲しい方いますかて言ったらすぐ引き取り手が見つかり、処分するのにお金はかからなかったので。ありがたいなと思いました。
撤退するのは割とスムーズにいって。

高橋:お店を持つっていうことになんとなく憧れていても、大抵の人が踏み出せないじゃないですか。多分、回収のことを考えていると思うんですよ。元々これだけお金がかかっているから回収しないと・・・っていう。事業計画をじっくり考えていくのがオーソドックスなやり方だと思うんですけど、ヌイブックスさんは初期費用のもと取らなきゃ!っていうのはなかったっていう事なんですかね。

池谷:そうですね。自分への投資だと思えばいいやと思って。
それまで書店員でお金貯めるのも大変って言っちゃあ大変だったんですよ、初期費用だけでも。全く借り入れとかしなかったので。自分が頑張ってきて、自分の経験のために頑張ってきたお金だから、経験に使えばいいと思って。そこは投資だなと思ったし、後悔しないと思えたので。最終的にマイナスにならなければいいやって、お金に関しては。

高橋:なるほど、経験のために貯めたお金を使ってオープンしたんですね。
人によってお金の使い方はいろいろあるけど、池谷さんは本屋開店にチャレンジすることにお金を使ったっていうことですね。

池谷:経験に投資と思えば。

●やらないまま死ぬのが一番嫌だから。

高橋:在るお金の範囲内で、やれることをやるっていう観点からしてみると、そろそろ閉める時期なのかなっていう判断はすごくしやすいですよね。

自分で小さいお店をやってみたいっていう気持ちが、池谷さんの中では一番強かったわけですね。

池谷:そうですね。

高橋:それは長期的にお店を運営して・・・どうのこうのっていうより、とにかく経験をしてみて、自分がどう感じるかっていうところを大事にして。

池谷:やらないまま死ぬのが一番嫌だから。

高橋:確かに!!ほんとにそうですよね。
お金を貯めていて、自分がやってみたいことにお金を使うのは、他の事と変わりがないから。それと同じような感じで使って、その限りあるものの中でなくなった時に終わるから、やめる決断もしやすいですよね。

そこで無理にと言うか、がんばっていろいろやっちゃうと、それはそれでまた別の問題が発生する可能性もあるので。

池谷:普通のお店だと始める時借り入れして、それをどう回収していくか計画を立てるんだと思うんですけど、そこまで私にはできなかったので。

高橋:どっちにするかですよね。自分の範囲でやってみてそこから広げていくか、初めからガッツリ勝負かけるか。

性格にもよると思うんですよね。私もTbooks始める前にちょっと考えたんですけど、借り入れをして何かをやるっていうのが私の性格的に向いてないなって思って。すごく心配性だから、夜も眠れなくなっちゃうような気がして(笑)。

池谷:わかりますー!私も多分そう(笑)。自分の手にはもう負えない!!ってなっちゃいそうで。

高橋:できる範囲の中でやって、それが難しくなったら手放していくっていうやり方が、そういうタイプの人には良いのかもしれない。

池谷:ある意味自分の金だからどう使おうといいだろうみたいな。

高橋:そうそうそう!悪いことやってるわけじゃないし。

じゃあ、大きい本屋さんでたくさんの本を扱うのがまたやりたくなったから、次の身の振り方もすんなり決められて。以前働いてたところに戻りたいって言ったらすぐ戻れたって事なんですよね。

池谷:閉店するって言うツイートを流したら、向こうから。

高橋:うそ!!

池谷:向こうから連絡いただいたんです、やめるの?って。そうなんですよって言ったら、何月に誰誰が辞めるからみたいな話になって、すぐ復帰させていただけたので。

高橋:やめるって公表する前に今後の身の振りを決めるんではなくて、先にTwitterで流したら・・・

池谷:ほんとにそうなんです(笑)。

高橋:それはすごい恵まれてる。もともとの仕事っぷりがよかったっていうのがあるんでしょうけど。
人に恵まれてますね。

池谷:本当に良かったと思ってます。

●ちっちゃい野望をちょっとずつ叶えていこうと思います。

高橋:今は大型書店で働きながら、うちの店では月に1回ぐらいディスプレイ変えてもらったりとか、セレクトの本を置いてもらったりお手伝いしてもらってるんですけど。

バレンタイン特集を作ってくれています。

他にお勤め以外の本屋活動は何かされてるんですか。

池谷:閉店してからは、せんぱくBookbaseさんでポップ講座をやらせていただいたり、明大前の七月堂さんから古本市に誘っていただいて、1ヶ月位の下北沢の三叉灯さんでの古本市に参加させていただいたりとか。その辺ですね。

高橋:Twitterでのつながりがあるから声をかけてもらって。

池谷:かけていただいて。ありがたいです。

高橋:じゃあ今働いている大型書店のお仕事に無理のない範囲で活動されているんですね。

池谷:今後はイラストとかも書いていきたいと思ってるので。

高橋:そうなんですか!

池谷:ヌイブックスをやってる間にTwitterのフォロワーさんも増えたので、つながりがいろいろできたんですよ。誰か拾ってくれないかなって思っていて。
イラストを書いて参加できる面白い企画とかあったらいいなと。

高橋:池谷さん自体がイラストを描いて、ってことですよね。

池谷:はい。

高橋:どういうイラストを描くんですか?

池谷:もともとイラスト描くの好きだったんですよ、人物とかなんですけど。アメコミじゃないんですけどそういうのが好きで。書いているので。

そっちの活動を結構やっていきたいたいなーと。

高橋:そうなんですか。

池谷:本屋の仕事が忙しいし、でも好きだから頑張っちゃうので、それをうまいこと調整するのがこれからの課題・・・。

高橋:そっか、イラストのほうも時間かかるよね。

池谷:そうですね、私、結構描くのに時間かかっちゃうんで。

高橋:本屋でやりたかった事はヌイブックスさんで一度やれたので、とりあえずそこの気持ちは落ち着いたと。

池谷:そうですね。落ち着きました。

高橋:またいずれ機会があったら本屋の方も・・・?

池谷:ですね。でも今度はおばあちゃんになってからやりたいです。

高橋:おばあちゃんになってから。

池谷:おばあちゃんになってから、私設図書館とか、やりたいなっていうのは思ってます。
それはほんとに仕事とかではなく、近所の子とかが来てくれるような場所。

高橋:いいですね。じゃあ今年はイラスト関係で活動する感じ。

池谷:ちっちゃい野望をちょっとずつ叶えていこうと思います。

高橋:何か他にもあるんですか?

池谷:今は作ることに興味があるので、イラスト以外でも映像制作とかもしてみたいなと。

高橋:映像制作!!どんな?

池谷:コマ撮りアニメとか。

高橋:そっか。やっぱりコミックが好きっていうのが元にあって、そこから広がってるんですね。

池谷:そうなんです。好きなものをもっと掘り下げて掘り下げて考えて。いろいろやって。

本屋をやったことをによって行動することに対するハードルが下がったんですよ。

高橋:本屋開いてりゃあ大抵の事はできる・・・(笑)。

池谷:そうですそうです(笑)。私、今まで踏み出すのがなかなか大変なタイプだったんです。絵も自分で描いてるだけっていう感じだったんですけど。もう外に出るのは怖くなくなりました。

高橋:それなのにヌイブックスさん決めたの早かったですね(笑)。
本屋をやったことでだいぶ殻を破ってますね!

池谷:そうですね(笑)。

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